■菊薫る朝のひととき

常務理事 齋藤伸子

(公益社団法人静岡県看護協会 常務理事)

 看護協会の教育研修部の仕事には多くの出会いと対話がある。一緒に勤務した施設の懐かしい同僚、立派に成長し貫録づいた看護学校の卒業生、以前に研修を受講された方、そして今日初めてお会いする方と、協会に居ながらにして、第一線で活躍する大勢の看護職の方々にお目にかかることができる。声をかけると“忙しい!”“た~ いへん!”と現場の状況を語ってくれるが、目は活き活き輝いている。看護という共通言語を通して、ちょっとした会話でも互いの気持ちを共有でき会話が弾む。みんな看護が好きなんだなと思える時である。
 さて、ファーストレベルの研修がスタートした2日目の朝のこと、昨日は深夜明けで疲れた表情のTさんが自宅の庭で育てた小菊の花を折ってきてくれた。元気な顔になっていてホッとした。黄色と白の小菊は茎が曲り少々行儀はよろしくないが、葉は朝露に濡れてみずみずしく薫り高い。葉っぱの重なった奥に、なんと7~ 8ミリのカタツムリの子供がじっと貼りついていた。この小さなお客様は殻からヌーッと頭を伸ばし、角を伸ばしてゆっくり移動を始めた。“かわいい”動きに魅せられ急いでカメラに収めてみた。菊の花は丁寧に活けていただいき、研修室や講師室、受講生を迎えるエントランスに飾っていただいた。
 朝のあわただしい時間を工面して花を届けようと準備する様子が目に浮かび、美しいものを分かち合うやさしい気持ちが本当にうれしく心にしみた。小菊の花はきっと皆の心を癒してくれるだろう。そう、あのカタツムリはどうしたのかしら? 屋外の緑の茂みで暮らしてもらうことにした。これからの寒さがちょっと心配だが、きっと大きく育ってくれると思う。



2014年11月17日



 

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