ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力
著者;帚木 蓬生(ははきぎ ほうせい)
今回は本の紹介をします。作者は多くの受賞歴をもつ小説家であり、臨床40年の精神科医です。悩める現代人に最も必要と考えるのは「共感する」こと、この共感が成熟する過程で容易に答えの出ない事態に耐えうる能力がネガティブ・ケイパビリティであると言っています。
人は答えを求められるとすぐに解決しようとし、また早く答えを出した人が優秀だと思われていないでしょうか。
脳科学的に言うと脳は「分かろう」とし、様々なことに意味づけ「理解」し「分かった」つもりになろうとする傾向があります。目の前にわけのわからないもの、不思議なもの、嫌いなものが放置されていると脳は落ち着かず、及び腰になります。そうした困惑状態を回避しようとして、脳はとりあえず意味づけをし何とか「分かろう」とするのです。
せっかちな見せかけの解決ではなく、共感の土台にある負の力がひらく、発展的な深い理解へとつなげていくことの重要性、このごろヒシヒシと感じています。例えば看護学生の様々な問題を見つめ、どんな思いでいるのかしっかり見守りつつ、成長を願いながら共感して過ごしています。こんな時を過ごしていくうちに、いい方向へと導かれるものです。
「人と人が接するところの問題は、おいそれと解決できなくて当たり前」無力感を覚えそうになったとき、この言葉が支えになる人は多いはずです。つまり、何かを成し遂げる能力ではなく、何もしない能力も時には必要なのです。こんなことが書いてあります。