認定看護管理者会役員のつぶやき

舞鶴赤十字病院
看護部長 奥野佐千子

看護科入学式に招かれて ―看護職として地域医療に貢献するためにー

 令和5年4月、近隣の看護科高等学校の入学式のお招きを受けました。コロナ禍にて、学校としては3年ぶりの来賓招待、私にとっては初めての入学式参列でした。私が看護部長として赴任した2020年は、新型コロナウイルス感染症が未知のウイルスとして世界中で流行し始めた頃です。病院はもちろん学校においても感染対策を取らざるを得ない時期でした。今年度(2023年度)の新入生は、感染対策のために制限された中学生生活を過ごされた事でしょう。そのような状況下において、新入生のメッセージ「15歳で看護師を目指す決意をした入学生の思い」が、私自身の五感を通じて心の中に染み入ってきました。
 当院看護職の4割が、この学校の卒業生です。コロナ禍の3年間は、病棟や外来、訪問看護など第一線で働く看護職にとって最も過酷なものでした。当院も198床の中小病院ではありますが、地域の中核病院としての役割を担っています。院内感染を発生させないことを目標に掲げ、医療者自身は日常生活においても会食や3密行動を避け、健康管理を行い、確実なマスク着用、手洗い等感染予防対策をとり、感染対策の知識と技術を身につけた上で、業務に従事しています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が感染症法で5 類感染症へ移行されても、患者に接する医療従事者にとっては、2類の頃と同様です。
 入学式の間、目の前の眩しい新入生の姿に、これまで歩んできた私自身の看護職人生を振り返っていました。私達の世代は、日本が経済的に最も発展した高度成長期に生まれ、バブル景気の頃に看護職になり、頑張れば頑張るほど成果と発展が期待できた時代でした。一方現代は、多様化・複雑化、デジタル化や持続可能な開発目標(SDGs)、人生100年と言われる時代です。私達とはまったく違った看護職人生を新入学生達は歩むことになるでしょう。
 入学式に参列した2ヶ月後、日本看護協会から「看護職の生涯学習ガイドライン」 が出されました。そこには、「社会が変化しても、看護職が人々の生涯にわたり健康な生活の実現に貢献することを使命として役割を発揮することは変わりません。-(中略)― 看護職一人ひとりが看護職として活躍し続けるためには、各自のライフイベントや価値観に応じて、仕事と生活の調和を図りながら自律的に学ぶことが求められます。」また、「生涯学習は免許取得後からスタートするのではなく、看護基礎教育の時期からその重要性や意義を理解することが必要」と示されていました。時代は変わっても、看護職としての使命は変わらず、仕事と生活のバランスをとりながら学び、役割が発揮できる看護職であり続けたいと思っています。
 看護科入学式に参列して、生涯働き続ける看護職を地域で育成する重責を再認識しました。看護科の講義や臨地実習を通して、赤十字理念 「人道・博愛」のもと一人ひとりにやさしさと思いやりをもって、いのちと健康、尊厳を守り、地域医療に貢献することに尽力してまいります。


1公益社団法人 日本看護協会 看護職の生涯学習ガイドライン (nurse.or.jp)

2023年7月10日