認定看護管理者会役員のつぶやき

常務理事  谷口 孝江

「最大120歳時代」で『つぶやき』

 読売新聞「明日への考」で、生物学者小林武彦氏のインタビュー記事を読んだ。哺乳類の心臓は総心拍数が、20億回ぐらいに達すると終わりになるという仮説がある。60年生きるゾウも、2年生きるネズミも、トータルで約20億回は同じ。では人間はどうか。人間の総心拍数が20億回に達するのは、50歳前後だという。また、がんの死亡数や女性の閉経年齢から、生物学的なヒトの寿命は55歳と推測されるらしい。しかしヒトが超えられない年齢の壁、言い換えれば最長寿命は120歳前後と生物学的寿命の2倍以上だ。野生の動物は生殖活動終了時期と、寿命を迎えるときが重なる。したがって、野生の動物に「老い」はないが、ヒトは老いる。ヒトはなぜ、そこまで長生きできるように進化したのか。その理由を、小林氏はこう説明する。「これは進化の過程で老いた個体、あるいは老いたヒトがいる集団の方が生存に有利に働き、選択されて長生きできるようになったためと考えられる」と。

 ここからが私の独創、まさに『つぶやき』なのでもう少しお付き合い願いたい。

 「老いた個体、老いたヒトがいる集団が生存に有利に働く」とは、どのような場面なのか想像してみた。私たちの祖先がまだ狩猟生活をしていた頃、老いたヒトが子どもの面倒をみて、若い男女が食料を確保する効率的な集団が生き残っただろうし、老いたヒトと生活することで、子どもが獲得できる免疫もあったかもしれない。そして集団で争いが勃発しそうなときは、平和的解決のために助言したのだろう。しかし現代は、核家族化が進み、経験豊かなシニアとの同居は、減少している。家族の単位だけでなく、社会のシステムにおいても隔たりができつつある気がする。長い年月をかけて進化してきた「長寿」は、退化していくのだろうか。

 再び、小林氏曰く。シニアがハッピーに生きると、若者は年齢を重ねることに憧れ、社会にも安定をもたらす。そして少子化対策にも繋がるから「上から攻めなきゃだめ」らしい。

とすると、組織も同じ。シニアがカッコ良く活躍できる組織が生き残り、発展することができるのかもしれない。調和をもたらすシニアの存在が、若いエネルギーを十二分に発揮させる環境を作り出す。「ヒト」の長寿は、「上からの攻め」でバランス良い組織が進化することのエビデンスだ。地域では保育所、介護施設で高齢者と子どもたちが集う工夫がされて、交流の機会が増えている。「上から攻める」社会づくりに、私たちも貢献しよう。認定看護管理者も、資格更新を継続しながら、健康の知識と豊富な経験をもって、世界一の長寿国の進化を支えよう。

注:ここでいう「シニア」は年齢の定義はない。生物学的に分類した4つ「オス」「メス」「子ども」「シニア」の内の一つ。「シニア」は直接生殖に関わらない分類で、ヒトの場合、集団をまとめ、文化を継承する役割を持つ。

小林武彦 著『なぜヒトだけが老いるのか』より

2023年12月01日