日本認定看護管理者会役員のつぶやき

中国四国地区ブロック役員 上田三千代

今の私を振り返って

『看護管理』9月号の鼎談記事(石垣靖子先生ら)に心を打たれました。「経験を重ねて、人間そのものを見ようとするまなざしが、自分の中に育っていくことを感じる。傍らにあることを許された自分をどう育てるか。いくつになっても成長できる大切な私」―これらの言葉にあこがれの婦長(師長)が重なりました。

新人として某大学病院のICUに配属された頃、私は先輩方の愛ある指導のもと、重症患者の看護に奮闘していました。スパゲティ・シンドロームで苦しむ患者さんに対しては、気管内チューブを抜かれないよう抑制を当然にように行っていた時代です。

そんなある日、婦長は患者の傍らで、手を握りながら目線を合わせて静かに話かけていました。そして、穏やかな口調で「天井ばかり見ている患者さんは、あの模様が何にみえているのかしら」とスタッフに問いかけたのです。その瞬間、私はハッとしました。バイタルサインやモニターばかりを見て患者さんの視界や心に寄り添うことを忘れていた自分の気づいたのです。

あれから数十年。多くの人との出会いと学びに支えられ、今も看護の仕事を楽しく続けられることに感謝しています。「まだまだだな」と反省することもありますが、がんばっている自分を少し褒めて、これからも成長し続けていこうと思います。

2025年9月24日

参考文献 1)木下晋, 石垣靖子, 濱口恵子, 岡山慶子. いのちに寄り添う看護師としての「私」を見つめる―そこから見えるケアの本質. 看護管理. 2025; 35(9): 790-797.