その他案内

  • トップ
  • 開催案内・報告
  • その他案内

第27回日本看護管理学会学術集会インフォメーション・エクスチェンジ5の報告

日時
2023年8月25日(金) 10:30~11:30
場所
東京国際フォーラム 第8会場
テーマ
認定看護管理者として取り組む新たな地域連携の形

Ⅰ.目的

認定看護管理者(以下CNA)として未来を見つめ、急速に進む患者の高齢化とそれに伴う在宅でのケアニーズへの具体的対応を検討する。

Ⅱ.話題提供者

  1. ライフ・ケア・コンシェルジュ(株)LCC訪問看護ステーション事業本部長 三枝克磨氏
    「病院敷地内に病院関連法人(企業)ではない訪問看護ステーションのサテライト事業所を開設した事例」
  2. 堺市立総合医療センター看護局長 澤田恵美氏
    「完全非公開型医療介護専用SNSを活用した患者支援」

Ⅲ.参加人数

175人(理事・役員、話題提供者含む)

Ⅳ.内容

インフォメーション・エクスチェンジ(以下IE)の目的説明の後、2名の認定看護管理者から情報提供を得た。三枝氏からは、病院敷地内に病院管理ではない訪問看護ステーションを開設した経緯をご紹介いただいた。地域包括ケア病棟入院料の施設基準変更に対応したい病院から誘致の相談を受け、病院との連携は退院前からのシームレスな介入が進み質向上につながるとの期待から受け入れを決定した。病院敷地内に開設したことで、実務者レベルでの情報交換が密になり、訪問看護側からのアプローチも活発となり、サービスの質向上につながっている。今後は同行訪問や師長会への参加、病院の研修への参加など、さらに連携を強めていきたいと述べられた。

澤田氏からは「完全非公開型医療介護専用SNS」(以下MCS)を活用した3事例を紹介いただいた。①難治性の創傷の画像を院内WOCと地域共有し対応出来た事例、②腹膜透析導入で機器操作や下肢浮腫の改善に活用できた事例、③腹膜透析で塩分の過剰摂取があり、栄養指導の介入で溢水を防げた事例。訪問看護側からは、タイムリーに連絡や相談ができ安心できる、画像共有で情報が伝えやすい、処置や受診などの対応が迅速にできる、などの評価を得ている。早期退院や重症化予防、再入院防止などの質向上にもつながっている。お二人の講演後のディスカッションでは「退院支援にとどまらない『在宅支援』を『CNAとして』どのように進めていくと良いか」「地域連携の新たな取り組みについての紹介や提案を共有する」の2論点を提示しつつ、広く質問や意見を求めた。

Ⅴ.意見交換

Q
院内に訪問看護ステーションを設置して良かったという具体的な事例があれば、教えて頂きたい。
A
(三枝氏)退院前から訪問看護ステーションの看護師が病院看護師と情報交換が密にでき、事務的な手続きがスムーズになった。院内のステーションという物理的な距離の成果だと思う。
Q
MCSの導入対象者に選択基準はあるか。
A
(澤田氏)創傷処置に20例 腹膜透析に5例をはじめ、退院後訪問した後のセルフケアの継続に役立てている。画像でのやり取りがあった方が良く、導入の同意が得られた方を対象としている。
Q
専門・認定看護師が地域と連携しており、リアルタイムにフィードバックできていることが、とても重要な点だと思う。どのように時間を確保しているのか、教えていただきたい。
A
(澤田氏)皮膚・排泄看護認定看護師は専従で活動しており、慢性疾患専門看護師は透析室の師長を担っている。また治療法の選択・意思決定に関わる外来も担当しており、外来スタッフとともに取り組んでくれている。
Q
フリーで活動しないと対応は難しいと考えるか。
A
(澤田氏)今後はこのような活動の需要は高まる。ただ、対象を拡大すれば情報の管理がむずかしくなり、何らかの組織的対応は必要になる。
Q
MCSと電子カルテは連動しているか。またコストはいかがか。
A
(澤田氏)電子カルテとは繋がっていない。専用のPCを使用している。MSCはセキュリティがしっかりしているし、実際には先方の施設と誓約書を交わして活用している。
(三枝氏)サービスによっては有料になる部分もあるようだが、無料の範囲で十分活用できている。
Q
患者サービスとしては良い点が多いが、病院にとってはいかがか。
A
(澤田氏)患者さんが重症化せず、再入院が減っていることは大きなメリットである。
(三枝氏)Faxや電話の手間や時間が削減でき、新たな時間活用ができることも有益と考える。
Q
敷地病院と連携する中で、訪問件数、診療報酬については病院から情報をもらうのか。また師長会に参加するとの説明だったが、どのようなテーマで話し合われるのか。
A
(三枝氏)地域での実績は、実際の訪問件数で見直すことができるので、訪問看護ステーション単独で作業できる。病院とは日々連携しており、担当の副部長と方向性を決めている。外来師長、主任たちとステーションの管理者が実務者レベルで話をしている。師長会では、訪問看護ステーションについて色々知ってもらっている段階である。
Q
認定看護管理者としての知識や経験が、今回の取り組みにどう役立ったかを教えてほしい。
A
(三枝氏)地域に貢献し求められる存在になることが大切だと考えている。常に自由な発想で自分から地域に出て価値を創造することを考えている。認定看護管理者であるからできることだと思う。
(澤田氏)現代の日本、社会背景を鑑みると高齢化、生産年齢人口の減少など課題は山積みである。そのような中で、自分たちの役割は何かを常に考えている。視座をもって地域を、社会を俯瞰して看ることができるよう努力している。リソースナースの活用、スタッフが在宅をイメージできるような工夫は、認定看護管理者として大切な取り組みだと考えている。
Q
今後、ますます介護、福祉施設との連携が必要になってくる。病院と訪問看護との連携は紹介いただいたが、他施設や地域との関わりをより具体的に聞かせてほしい。
A
(三枝氏)地域間でのFAXでのやりとりもあるが、積極的に足を運び、対面してお話しすることを大切にしている。地域で開かれる会議は大事だと思うし、病院や現場の管理者に顔を知って頂く良い機会である。
(澤田氏)当院は行政や大学と共同して「疾病予防」「フレイル予防」に取り組んでいる。また保健センターや図書館とブックリストを作成して、健康に関する情報を紹介している。
Q
病院と在宅・訪問で働く看護職がお互いを理解するにはどうすればよいか。
A
(三枝氏)わかってくれるのを待っているのではなく、自分たちからアプローチを始めている。確かに医療と介護は分かれていると思うが、あきらめずに働きかけていきたい。
(澤田氏)当院は急性期病院だが、病院看護師が患者さんのご自宅に伺うことから始めた。退院後の患者さんの生活を知ることで、病院でのケアを振り返り新たな発見もできる。看護師の提案で患者さんが自宅へ帰る決心がつくこともあり、やりがいに繋がる。まずは、できることから一歩を踏み出したい。本当の意味での地域連携は、まだまだこれからだと考えている。

Ⅵ.まとめ

座長:発展的で活発な意見交換ができ、認定看護管理者としてどのように考えるか、これからの活躍の視座をいただいた。
会長:多くの方々に参加いただき、意見交換、情報共有ができたことに感謝する。認定看護管理者会は、認定看護管理者、サードレベル修了者であれば入会できるので、ぜひ入会していただきたい。そして皆で将来ビジョンを掲げて、力を合わせて未来に向かっていきたい。

Ⅶ.アンケート結果

1.回収結果

回答者数は21名(回収率は約13%)であった。

2.属性

20名(95.2%)が病院勤務、12名(57.1%)が看護部長相当職であった。認定看護管理者ではない方3名(14.3%)、非会員の方6名(28.6%)を含め、参加者の多く(66.7%)が「テーマに興味があった」という理由で参加された。

3.参加者が考える「地域連携の形」

限られた時間の中では参加者全ての方との意見交換は困難であるため、参加者が考える「地域連携の形」を共有すべく、下記の2項目について自由記述で回答を求めた。なお、【】は回答内容を分類したカテゴリー名を示す。

1)CNAとして「在宅支援」をどのように進めていくと良いと思うか
【地域を知る】
・在宅の状況を先ずは知る事が重要
・まずは管理者自らが在宅を把握する
・在宅医療を理解し患者、家族が求めている支援に結びつく情報を伝える
【連携の構築】
・訪問看護と連携室と協働
・自院と近隣病院、クリニック、訪看との顔の見える関係からの連携
【スタッフ教育】
・急性期の当院でも、スタッフの意識を変える事から
・看護職員の理解をまず深める
・地域に目を向けているのは当然として、自施設の在宅支援のレベルを上げるような関わりを強化する仕組みを作ることも大切
【覚悟】
・やるべき使命
2)あなたの施設で取り組んでいる「在宅支援」はどのようなものか
【訪問事業の展開】
・訪問看護、訪問診療
・来年、ステーションを立ち上げる予定
【連携強化】
・他施設(療養型)とのWEB会議
・病棟から、退院前訪問、退院後訪問指導をやっている
・退院前、退院時訪問を看護職だけでなく、多職種で行なっている
・退院調整係が多職種と協働して調整している
・入退院支援
【スタッフ教育】
・ラダー研修に訪問看護ステーション研修を実施